交通事故で骨折をしたときの損害賠償請求について解説していきます。
事故直後に警察へ通報
警察への報告
交通事故では、まずは警察に通報することが必要です。
警察に報告することで、交通事故証明書を発行してもらうことができるようになり、事故が発生したことを証明できるようになります。
交通事故に遭ったら迷わず警察に報告しましょう。
人身事故としての届出
警察から、交通事故を「物損事故」にするか「人身事故」にするか確認されます。
警察から色々な説明を受けると思いますが、骨折のような重い怪我をしたのであれば迷わず人身事故にすべきです。
交通事故を人身事故にしておけば、実況見分調書を入手できるようになり、事故状況の争いになったときに有利に使える場合があります。
交通事故を人身事故にするときは、警察に診断書を提出します。
骨折をした事故でも物損事故になっていることがありますので、きちんと警察に確認するようにしましょう。
骨折について病院での治療
交通事故で骨折をしたら医師の指示に従い治療を受けましょう。
治療中に問題となることを解説していきます。
通院の注意点
骨折の治療は、定期的に通院して骨癒合の状態を確認したり、関節の可動域を回復させるためにリハビリを行っていくことになりますが、医師の指示にしたがって治療を継続することが重要です。
治療が長期間になるからといって中断してしまったり、きちんとリハビリを行わないと、正当な賠償を受けられない可能性があります。
治療費の支払い
治療費については、基本的に保険会社が病院に直接支払いを行います。
病院によっては、保険会社の治療費の直接支払いを認めていないこともありますので(健康保険を利用する場合)、こうした病院では被害者が支払いを行います。
被害者は、保険会社に1か月程度まとめて領収を提出し、治療費の請求をすることになります。
労災保険を使える、通勤中の事故や、仕事中の事故の場合、健康保険で治療を受けることはできません。
交通事故で労災保険を使うことのメリットは大きいですし、労災保険を使えるときは健康保険を使えないというルールになっているので、きちんと労災の手続きをするようにしましょう。
通院交通費
通院交通費を請求することもできます。
公共交通機関であれば特に問題なく損害として認められますが、タクシー代については、必要性、相当が求められます。
保険会社と交渉するときも、足の骨折であればタクシー代も認められやすいですが、上半身の骨折であれば必要性を丁寧に説明する必要があります。
また、タクシー代は領収書がないと支払いを受けられませんので、領収書はなくさないように保管しておきましょう。
治療後の症状固定
症状固定の時期
症状固定とは、治療により怪我が完治した状態や、治療を続けてもこれ以上は良くならないという状態をいいます。
骨折については、骨折箇所の状態を経過観察する期間や、リハビリを続ける期間など幅がありますので、医師と相談しながら「症状固定」の適切なタイミングを検討する必要があります。
また、保険会社が「もう症状固定である」として治療費の支払いを打ち切ることもありますが、医師が治療継続の必要があると判断しているのなら、健康保険を使用して通院を継続すべきです。
後遺障害診断書の作成
骨折について症状固定のタイミングを迎え、痛みや関節の可動域の制限(動きの制限)などが残っているときは、後遺障害診断書を作成してもらいます。
後遺障害診断書を作成してもらうときは、痛みなどの自覚症状をきちんと書いてもらい、可動域も「自動」「他動」を測定し記載してもらいます。
痛みなどの自覚症状は、後遺障害診断書に記載がなければ「痛くない」という評価になってしまいますので、漏れなく伝える必要があります。
骨に変形があるときは、変形障害の欄に丸をつけてもらうことも忘れてはいけません。
また、骨が変形や癒合不全を証明するためにCT画像を撮影することもありますし、後遺障害の認定を受けるために必要な検査もあります。
後遺障害の認定
自賠責保険の被害者請求を行い、後遺障害について認定を受けることになります。
認定結果に不満があるときは、異議申立てを行うことができます。
損害賠償について示談交渉
怪我の治療が終了し、後遺障害についても争いがない状態となれば、具体的な賠償金額について保険会社と交渉を始めることになります。
保険会社との交渉で注意することを解説していきます。
慰謝料
交通事故の慰謝料には、傷害慰謝料(入通院慰謝料)と後遺障害慰謝料があります。
傷害慰謝料(入通院慰謝料)というのは怪我をしたことによる慰謝料で、後遺障害慰謝料というのは後遺障害が認められることによる慰謝料です。
どちらの慰謝料も、算定する基準として「自賠責基準」、「保険会社基準」、「裁判基準」の三つの基準があり、どの基準を採用するかで金額が大きく異なることになります。
裁判基準で計算した慰謝料が一番高額ですが、保険会社からの示談案では自賠責基準か保険会社基準で計算された慰謝料額になっているはずです。
また、骨折では治療期間のわりに通院日数(病院に行った日数)が少ないことが多く、保険会社は通院日数を理由に驚くほど低額の傷害慰謝料(入通院慰謝料)を提示してくることがあります。
このままの慰謝料額で示談をしてしまうと損をしてしまう可能性があるので、示談をする前に弁護士に相談することをお勧めします。
後遺障害逸失利益
交通事故で後遺障害が認められると、仕事をする能力が低下したとして後遺障害逸失利益を請求することができます。
骨折した事案では大きな後遺障害が残ることも多く、後遺障害逸失利益が争いになることが少なくありません。
過失割合
被害者にも過失がある交通事故では、過失割合によって被害者が受けとる賠償金額が減らされてしまいます。
骨折したときの賠償金額は、過失割合によって大きく変わってしまいますので、過失割合が大きな争いとなることもあります。
過失割合の争いが大きいときは、交通事故に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。
まとめ
交通事故で骨折をしたときは、きちんと治療を受け、症状が残るのであれば後遺障害診断書を作成してもらい、適正な後遺障害の主張を行う準備が重要となります。
また、保険会社は慰謝料について低い金額を提示することが予想されますので、慰謝料の増額交渉を行う必要もあります。
後遺障害の主張など、個人で損害賠償請求をしていくのは難しい問題があります。
骨折については治療中から損害賠償請求に向けた対応をする必要がありますので、早めに交通事故を専門とする弁護士にご相談下さい。